文化施設・学校・地域・ボランティアがつなぐ「子どもたちの『ほんもの体験』活動」
たぬきの森 毎日日記
ワークショッププロジェクト・モデル事業「しが・ほんもの体験ネットワーク」は、 「まるエコ」づくりの一環として、子どもたちが「ほんもの」との出会いを体験する活動の広がりを応援しています。
 10月29日~11月6日まで、甲賀市信楽町で実施される「アートinレジデンス たぬきの森」 〔主催:(財)滋賀県文化振興事業団〕(当事業の見学会開催案内参照)。 この事業に協力している「子どもの美術教育をサポートする会」の学生ボランティアさんの日記を通して、 子どもたちと「ほんもの」との出会いの現場を紹介します。

たぬきの森 毎日日記 8日目
11月6日(日)天気:雨
 なんと、この日に限って雨が降ってしまいました・・・実は雨の予報は昨日辺りからあったのですが、なんとか持ち越していました。しかし今日ついに降ってしまったのです。初日の悪夢がよみがえります。土壌が悪くなるし、何よりカッパをつけなければならないのでみんなの衣装が見えなくなってしまいます。しかしそうも言ってられません。作業がまだ終わっていないので、ラストスパートをかけました。木の家にボーイスカウトやガールスカウトの看板を、入り口に「たぬきの森」の看板を設置しました。また、森の中にたぬきの焼き物を4体住ませました。また、昨日取りかかった作品も完成させねばなりません。ここは、何本もの木に囲まれた砦のようになっていました。たぬきの森の神社になるというのです。
 中には高さ130cmぐらいの信楽焼のたぬきの置物が置かれます。神社は高い位置にあり、光が射す場所に設置され、中に入ると木に囲まれるので狭い空間にたぬきと二人っきりになります。この神社がこの森を守ってくれる。スタンさんの発想に感動しました。
 子どもたちが来ました。もう開演の午後1時まで残り30分。しかしこの神社の階段がまだ完成されていません。杭を打っていたスタッフもそろそろ限界のようですが、なんとか終えられました。最後に、たぬきの焼き物を大人約5人がかりで運んで中に収めました。感動の瞬間です。その時、安堵と感動と感激で、心の底から涙があふれてきました。「完成してよかった~、ほんまよかった~」自然と口をついて言葉が出てきました。本当に、良かったです。ものすごい達成感を感じました。
 さて、ここからは演劇を楽しみましょう! 9匹の動物たちが、森にそれぞれ隠れています。柏木さん(演劇百貨店代表の方)が「リスー!」と動物の名前を呼ぶと「はーい」とどこからか返事が聞こえてきます。「それでは皆さま、これから動物たちを探しに行きましょう!」と柏木さん。さっきの返事をたよりに観客の皆さまもたぬきの森に足を踏み入れ、動物たちを探し始めました。木の家、巣、ツリーハウス、ハンモック、神社、それらをつなぐ通路。「あ、うさぎが今いたよ!」「おおかみどこなんー?」参加者も森の動物のように歩き回りました。その後、柏木さんと高橋学芸員(世田谷美術館)と大西さん(演劇百貨店)が竹を鳴らして合図すると、動物たちが中央の巣に集まってきて、紅葉した赤い葉っぱを巣にまき始めました。だんだん巣の中が赤くなっていきます。まき終えると、竹のリズムに合わせてダンスが始まりました!とてもかわいかったです。たった3日間で練習したのですね。演劇が終わり、拍手喝采! 動物たちの紹介後、カッパを脱いで衣装をお披露目することができました。努力が報われて一安心。
 演劇は20分程度のものでしたが、たぬきの森をにぎやかにさせる野生の動物たちに子どもたちが扮し、森の中を存分に楽しむという、子どもにも森にも嬉しいものとなりました。私たちが創ったこの森は、このようにして子どもたちや大人が日常の人工物にまみれた生活から一歩出て、自然と対話する場所であってほしいと私は思います。でも人それぞれに、ここで遊んで楽しむもよし、自然のおいしい空気を吸って気分転換するもよし、自由に体験して下さい。一度、遊びにきて下さい!
 一つの目標に向かって、機械を使わず人の手のみで作家や地元の方々と密着して作業を進め、最後はこの場を最大にいかした演劇を行った今回のワークショプ。年齢も越え、地域も越え、自然と人間の境界も越え、だからこれほど自由で心地よい時間を過ごせたのかもしれません。目標実現のためにお互いの信頼も確立され、自分の仕事をやり通す責任も生まれました。お互いに意見するところは意見するべきであるということや、人を気遣う気持ちがないと作業もうまく進まないということも実感しました。改めてふり返ると、本当に様々なことを経験しました。当たり前のことばかりかもしれませんが、それが実現するとこのような
素晴らしい結果となるのです。たぶんこれから生きていく中で、この経験の大きさは除々に膨らんでいくのではないかと感じています。
 また、この取り組みが順調に進んだのは、このレポートには記載しきれていないですが、たくさんの方々の支えがあってのこと、ということを忘れてはいけません。この場を借りてですが、本当にありがとうございました。

子どもの美術教育をサポートする会 学生ボランティア 京都精華大学3回 今井奈津美


 
  巣にたぬきの焼き物を設置しています。   最終打ち合わせ。どんな演劇を見せてくれるのでしょう・・・。
   
 
たぬきの森神社に、たぬきの神様登場!  
 
  さあ、ついに演劇の開演です!柏木さんの説明が始まりました。   さあ、観客の皆さまも森に足を踏み入れ、動物を探しに行きましょう!
   
  落ち葉がまかれた巣で、動物たちがダンスを披露。   最後は動物たちに出てきてもらい、柏木さんが挨拶をされ、演劇は幕を閉じました。